お墓の相続トラブル〜兄弟で誰が相続する?解決方法は?徹底解説~

お墓の相続は、故人への思いや家族のつながりに関わるため、金銭的な遺産相続とは異なる難しさがあります。特に祭祀承継は感情的な対立を生みやすく、親族間での争いに発展するケースも少なくありません。
本記事では、お墓の相続でよくあるトラブルとその解決策、祭祀承継に関する基礎知識、そして具体的な手続きについて解説します。
お墓の相続で起こりやすい3つのトラブルと解決方法
お墓の相続は、法的な側面だけでなく、感情的な側面も大きく影響するため、トラブルに発展しやすい傾向があります。ここでは、特に起こりやすい3つのトラブルとその解決方法について解説します。
①複数の人が祭祀承継者になりたいと言って争いになる
お墓や仏壇などの祭祀財産は、特定の「祭祀承継者」が引き継ぎます。しかし、故人への思いや供養の意思から、複数の親族が祭祀承継者になりたいと主張し、争いになることがあります。このようなケースでは、故人の生前の意思が最も尊重されます。
遺言書で祭祀承継者が指定されていれば、指定された方が優先されます。もし遺言がない場合、慣習や地域のしきたり、親族間の話し合いで決定するのが一般的です。話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることも可能です。裁判所は、故人との関係性や、実際に祭祀を主宰していた実績などを総合的に考慮して判断します。
②祭祀承継者になりたい人が誰もいなくて困る
現代社会では、核家族化や少子高齢化、さらには遠方での生活など、さまざまな理由からお墓を守る人がいなくなるという問題が顕在化しています。祭祀承継者が誰もいない場合、お墓の維持管理が滞り、無縁仏になる可能性も出てきます。
この問題に対する解決策としては、まず親族間で改めて話し合い、お墓を守ることの意義や責任について共有することが重要です。それでも承継者が決まらない場合は、永代供養墓や樹木葬といった、寺院や霊園が永続的に管理・供養してくれる形式へ改葬する選択肢も検討できます。そうすると、子孫に負担をかけることなく、永続的に供養を続けられます。
③遺産分割の割合で争いになる
お墓は祭祀財産であり、遺産分割の対象となる「相続財産」とは異なる性質があります。そのため、お墓そのものの価値が遺産分割の割合に直接影響を与えることはありません。しかし、お墓の維持管理費や、新たに購入する費用などが、遺産全体の分割に際して議論の対象となることがあります。
たとえば、お墓の購入費用を故人が生前に支払っていた場合、その費用を特定の相続人が負担すべきかどうかが争点となることも考えられます。このような争いを避けるためには、遺言書で祭祀承継者を明確に指定し、お墓に関する費用負担についても具体的に記載しておくことが有効です。また、親族間で事前に話し合い、それぞれの負担割合について合意を形成しておくことも大切です。
お墓の相続でトラブルが多い祭祀承継について
お墓の相続におけるトラブルの多くは、祭祀承継に関する認識不足や意見の相違から生じます。ここでは、祭祀承継に関する基本的な知識を深掘りし、よくある疑問について解説します。
祭祀財産とは?遺産との違い
祭祀財産とは、系譜(家系図など)、祭具(仏壇、位牌、神棚など)、墳墓(墓地、墓石など)といった、祖先を祀るための財産のことです。これらは「民法」によって、一般的な遺産とは異なる特別な扱いがされます。
遺産は相続人が複数いる場合、原則として全員の共有となり、遺産分割協議によって分割されますが、祭祀財産は特定の「祭祀承継者」が単独で承継します。そのため、祭祀財産は相続税の課税対象にもなりません。この点が、遺産と祭祀財産の最も大きな違いです。
祭祀財産の相続はどうする?祭祀承継者の役割とは?
祭祀財産は、法定相続分や遺留分といった民法の相続に関する規定の対象外です。故人が遺言で祭祀承継者を指定していれば、その指定された方が祭祀承継者となります。遺言がない場合は、地域の慣習や親族間の話し合いによって決定されます。
なお、祭祀承継者の主な役割は、お墓や仏壇の維持管理、法要の主催など、祖先を供養する一切の行事を責任をもって行うことです。
祭祀承継者の順位はどう決まる?兄弟間だと長男が相続する決まりがあるの?
祭祀承継者の順位は、民法で明確に定められているわけではありません。慣習が優先されるため、地域や家によって異なる場合があります。一般的には、故人が生前に指定した者が最優先されます。
指定がない場合、最も有力なのは、故人と同居していたり、生前からの関係が深かったりする親族です。かつては、長男が祭祀承継者となる慣習が多く見られましたが、これはあくまで慣習であり、法的な決まりではありません。兄弟間であっても、長男に祭祀承継の義務があるわけではなく、話し合いで決めるのが一般的です。
祭祀承継者に選ばれたとき、祭祀承継者になることを拒否できる?
祭祀承継者への就任は、あくまで「任意」です。したがって、祭祀承継者に選ばれたとしても、それを拒否することは可能です。
これは祭祀承継がお墓や仏壇の管理、法要の主催など、経済的、精神的な負担が伴うためです。ただし、拒否する際には、速やかに他の親族にその意思を伝え、次の承継者を見つけるための話し合いに参加することが望ましいでしょう。
相続の手続きと必要な書類
お墓の相続は通常の遺産相続と異なり、特別な手続きが必要です。祭祀承継に関する手続きの流れと必要な書類を確認しましょう。
手続きの流れ
まず、祭祀承継者を決定します。故人の遺言書があればそれに従い、なければ親族間の話し合いで決めます。
祭祀承継者が決まったら、次にお墓を管理する霊園や寺院に連絡し、名義変更の手続きを行います。霊園や寺院によって手続きや必要書類が異なります。事前に確認しておきましょう。
必要な書類
お墓の名義変更には、一般的に以下の書類が必要です。
- 故人の死亡診断書や死亡届の写し
- 火葬許可証の写し
- 祭祀承継者の住民票
- 印鑑証明書
- 故人と祭祀承継者の関係を示す戸籍謄本や除籍謄本 など
霊園や寺院によっては、使用承諾書や名義変更申請書、遺言書で指定されている場合は遺言書の提出も求められることがあります。事前に霊園や寺院に問い合わせ、リストを確認し、漏れなく準備しましょう。
よくある質問
お墓の相続に関する疑問は多くの方が抱えています。ここでは、特によくある質問とその回答について解説します。
お墓を相続したくないときどうすればいい?
お墓を相続したくない場合は、いくつかの選択肢があります。まず、祭祀承継者になることを拒否できます。その際は、他の親族にその意思を伝え、次の承継者を探してもらうことになります。
もし、誰も承継を望まない場合は、「墓じまい」を検討できます。墓じまいには費用がかかるため、親族間で費用負担について話し合いが必要です。また、行政手続きも伴います。
なお、墓じまいの費用について、以下の記事でまとめています。あわせてご覧ください。
親族間のお墓のトラブルは誰に相談したらいい?弁護士?
お墓に関する親族間のトラブルは、感情的な対立が深まりやすく、当事者だけでは解決が難しいケースが多いでしょう。当事者間で解決しない場合は専門家への相談を検討しましょう。特に法的な問題が絡む場合は、弁護士への相談が有効です。
弁護士は、祭祀承継者の決定に関する調停や審判の申し立て、墓じまいに関する法的アドバイスなど、専門知識に基づいてサポートしてくれます。
遺産相続の際に墓守料の上乗せは要求できる?
墓守料は、お墓の維持管理にかかる費用を指します。お墓は祭祀財産であり、遺産分割の対象ではありません。そのため、墓守料も直接的には遺産分割の割合には影響しません。
しかし、祭祀承継者が墓守の負担をすることに対し、他の相続人から経済的な支援を求めることは可能です。その際は、遺産分割協議の際に、祭祀承継者の負担を考慮し、他の相続人から協力を求める形で話し合うのが一般的です。
まとめ
お墓の相続は、遺産とは異なる祭祀財産の承継であり、トラブルが生じやすいものです。そこで、祭祀承継者の明確化や親族間の丁寧な話し合い、そして必要に応じた専門家への相談が解決のポイントとなります。特に祭祀承継者が不在の場合の墓じまいや、それに伴う費用負担の合意形成は重要なポイントです。
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