お墓を放置したらどうなる?法律や裁判のリスク、墓じまいのお金がないときの対策も解説

近年、お墓を放置する人が急増しています。
背景には、少子化や核家族化、経済的負担の増大など、現代社会特有の複雑な事情が絡み合っています。
お墓の管理や承継が困難になることで、無縁墓が社会問題となり、法的リスクや地域トラブルも深刻化しています。
本記事では、お墓放置の現状とリスク、費用負担に悩む方への具体的な解決策、現代的な供養方法まで解説します。
お墓を放置する人が増えている背景と現状
お墓を放置する人が増加し、無縁墓が全国的な社会問題となっています。
総務省の調査では、公営墓地・納骨堂を持つ市町村の約6割で「無縁墓が1区画以上ある」と回答しており、全区画の1割が無縁墓という霊園も存在しています。
この現象の背景には、現代社会の構造変化が大きく影響しています。
参考:総務省
墓を放置する主な理由
お墓が放置される理由は多岐にわたりますが、特に次の3点が大きな要因です。
少子化・核家族化と承継者不足
少子高齢化と核家族化が進む中、家族構造が大きく変化しました。
一人っ子同士の夫婦や生涯未婚率の増加により、今までのように家族でお墓を守ることが難しくなっています。
また、家制度の崩壊や個人主義の台頭もあり、墓を承継する意識が希薄になりました。
このため、次世代にお墓を引き継ぐ人がいない家庭が増え、お墓の管理が困難になるケースが多発しています。
田舎の墓へのアクセスが困難
都市部への人口集中や転勤・進学による移住が進み、実家のある地方にお墓が残されるケースが増えました。
遠方に住む親族は、時間や交通費の負担が大きく、頻繁に墓参りや清掃に通うのは現実的ではありません。
結果として、お墓の管理が行き届かず、放置されてしまう事例が増えています。
墓じまいの費用負担
墓じまいには、墓石の撤去や遺骨の移転など多くの費用がかかります。
一般的な墓じまいの費用相場は30万円から200万円程度とされ、決して安価ではありません。
経済的な理由から墓じまいを断念し、結果的にお墓が放置されることも多いです。
ここまで紹介した内容が絡み合い、お墓の放置が加速しています。社会全体での対策が求められる状況です。
墓を放置した場合に起こること・法律・裁判のリスク・最後はどうなるの?

お墓を放置すると、管理費滞納や無縁墓化をきっかけに、管理者や地域社会とのトラブル、法的手続き、最終的な撤去・合祀へと進みます。
放置を続けると、民事責任や損害賠償のリスクも発生します。
管理者からの督促・告知
お墓の管理費が未納になると、まず墓地管理者から督促の連絡や書面が届きます。
これを無視すると、再三の督促状や内容証明郵便が送付され、親族や承継者にも連絡が及ぶ場合があります。
管理費の滞納が続くことで、墓地使用権の消滅や契約解除の手続きが進められることになります。
地元住民とのトラブル
放置されたお墓は雑草が生い茂り、墓石の劣化や倒壊が進みます。
これにより周囲の景観が損なわれ、他の墓地の管理や近隣住民に悪影響を与えます。
苦情やトラブルが発生し、地域全体の環境悪化につながることも少なくありません。
官報掲載や立て札による最終通告
管理費の滞納や連絡が取れない状態が続くと、墓地管理者は法的手続きに進みます。
まず官報に墓地使用者の氏名や住所、本籍地を掲載し、同時に現地に立て札を設置して最終通告を行います。
この告知から1年間、申し出がなければ無縁墓と認定され、墓石の撤去や遺骨の合祀が進められます。
墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)
お墓や埋葬に関するルールは「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」で規定されています。
この法律は公衆衛生の保持や墓地の適正管理を目的とし、墓地の設置や改葬には市区町村長の許可が必要です。
無許可での埋葬や墓地設置は6か月以下の懲役または5,000円以下の罰金が科される場合があります。
管理費の滞納や長期間の放置で墓地使用権が消滅することもあり、改葬には必ず自治体の許可が求められます。
参考:厚生労働省
墓を放置した場合の法的責任
墓地管理者は、無縁墓と認定されたお墓を撤去し、遺骨を合祀墓に移す法的権限を持っています。
墓石撤去後に承継者が現れた場合、永代使用権の侵害や墓石所有権の侵害を理由に損害賠償を求められることもあります。
民法上、所有者にはお墓の適切な管理義務があり、放置によって他人に損害を与えた場合は不法行為責任を問われることもあります。
通告などを無視し続けた場合の罰則
通告を無視し続けても刑事罰は原則ありませんが、民事上の損害賠償や費用請求のリスクが残ります。
管理費滞納や放置が悪質と判断されれば、裁判や訴訟に発展することもあります。
最終的には墓石が撤去され、遺骨は合祀墓に移されるため、個別供養ができなくなることも多いです。
お墓の放置は、社会的・法的なリスクを伴う問題です。
早めに管理者や親族と相談し、適切な対応を取ることがトラブル回避のカギとなります。
墓じまいをしたいが「お金がない」ときの解決策

墓じまいを検討しても、費用面で悩む方が多いのが現実です。
しかし、工夫次第で負担を軽減する方法があります。ここでは、具体的な解決策を紹介します。
家族・親族で費用分担
墓じまいの費用は、家族や親族で分担するのが一般的です。
法律上、誰が費用を払うかの決まりはありませんが、親族間で話し合い、均等に負担することで一人あたりの負担を減らせます。
親族が多い場合は、少額ずつ出し合うことで現実的な解決につながります。
分割払いやローンの活用
まとまった資金が用意できない場合、分割払いやローンの利用も有効です。
石材店や霊園業者によっては、2〜3回の分割払いに対応している場合があります。
また、金融機関の多目的ローン(フリーローン)も利用可能ですが、金利が高めなので十分な検討が必要です。
審査や収入証明が必要な場合もあるので、事前に確認しましょう。
自治体の補助金申請
自治体によっては、墓じまいの費用(主に墓石撤去費用)に対して補助金を支給しています。
上限は20万円前後が多く、申請には工事完了後の領収書などが必要です。
補助金制度の有無や金額、申請方法は自治体ごとに異なるため、事前にお墓のある地域の市役所や自治体ウェブサイトで確認しましょう。
石材店の相見積もり
墓じまいの費用は、石材店によって大きく異なります。
お寺によって石材店が指定されているケースがほとんどであるため、出来ない場合が多いですが、可能な場合、複数の石材店から相見積もりを取り、費用やサービス内容を比較しましょう。
現地調査や契約内容の確認も重要です。
墓石撤去費用の相場は10万円/㎡程度、総費用は30万〜200万円が一般的です。
両家墓の検討
夫婦それぞれの実家にお墓がある場合、両家の遺骨を一つのお墓にまとめる「両家墓」も選択肢です。
遠方の墓を維持管理するよりも、交通費や管理費の負担が軽減され、家族全体での供養も行いやすくなります。
両家墓の建立や改葬には、各家族間での合意が必要です。
相談窓口・無料相談サービスの活用
墓じまいや供養に関する悩みは、専門の相談窓口や無料相談サービスを活用しましょう。
終活・お墓の相談所や各地域の石材店、自治体の窓口などで、費用や手続き、トラブル回避のアドバイスが受けられます。
見積もりや業者紹介も行っているため、納得できる契約内容を選ぶためにも積極的に相談しましょう。
墓じまいをしなくても大丈夫な改葬先の選択
墓じまいをせずに、永代供養墓や樹木葬など現代的な供養方法を選ぶのも有効です。
永代供養墓は、契約内容によっては、管理や供養を寺院や霊園が永続的に行うため、承継者がいなくても安心です。
樹木葬は自然に還る新しい供養方法で、費用も比較的抑えられる傾向があります。
どちらも事前に見積もりや管理内容を確認し、自分や家族に合った方法を選びましょう。
なお、墓じまいの費用については、次の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
お墓の放置は、少子化や核家族化、経済的負担など現代社会の課題が背景にあります。
放置した場合、管理者や地域社会とのトラブル、法的リスクが生じ、最終的には撤去や合祀となる可能性が高いです。
費用面で悩む場合も、家族や親族での分担、補助金やローンの活用、専門家への相談など多様な解決策があります。
現代的な供養方法として、永代供養墓や樹木葬も選択肢に加わっています。
関内陵苑では、地方で無縁墓や無縁仏になりそうなケースの改葬先として多くの相談を受けてきました。
ニーズに合ったご提案も可能ですので、是非ご相談ください。