お墓の引っ越し〜移すのはよくないこと?流れや費用についても解説~

「お墓の引っ越し」と聞くと、なんとなく後ろめたい気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは法的に認められた「改葬(かいそう)」という手続きであり、決して悪いことではありません。
本記事では、お墓の引っ越しの具体的な手続きから費用、そして現代において引っ越しを選ぶ人が増えている背景まで解説します。
お墓の引っ越しはよくないこと?不幸になるって本当?
結論からいうと、お墓の引っ越しが不幸を招くという科学的根拠は一切ありません。一部地域にはお墓の移転を良くないとする風習が残ることもありますが、現代では「改葬」と呼ばれ、法律に則って行われる正当な手続きです。
ご先祖様を大切に思う気持ちがあれば、供養の方法を変えることは問題ありません。むしろ、お墓を適切に管理し、定期的に供養できる環境を整えることは、ご先祖様にとっても喜ばしいことです。現代のライフスタイルに合わせて、お墓のあり方を見直すことはごく自然な流れといえるでしょう。
お墓の引っ越しの流れは?
ここからは、お墓の引っ越しの流れを具体的に解説します。それぞれの手順を確認し、滞りなく進めましょう。
寺院・霊園等に相談し、許可を得る
お墓の引っ越しを考え始めたら、まずは遺骨が安置されている寺院や霊園の管理者に相談しましょう。事前にアポイントメントを取り、直接話す機会を設けるのが望ましいです。
そして、引っ越しを検討している旨を丁寧に伝え、理解と協力を求めましょう。長年にわたりお世話になった感謝の気持ちを伝えることが大切です。特にお寺の場合は「離檀(りだん)」という形で檀家を離れることになります。円満な関係を保つためにも、誠意をもって対応しましょう。
寺院や霊園によっては、独自の手続きやルールがある場合も考えられるため、事前に確認が必要です。
現状の墓地を確認し、引っ越し先の候補を選ぶ時の参考にする
現在の墓地の状況を詳しく確認することは、新しい引っ越し先を選ぶうえで非常に役立ちます。墓地の広さ、区画の形状、日当たり、水はけ、周囲の環境などを細かくチェックしましょう。
たとえば、現在の墓地が日当たりが悪くジメジメしていると感じるなら、新しい場所では日当たりの良い場所を選ぶなどの参考にできます。また、墓地までの交通アクセスや、車椅子利用者への配慮、駐車場などの利便性も重要な検討材料です。
現在の墓地での良い点や不満な点を具体的にリストアップすることで、新しいお墓に求める条件が明確になるでしょう。
引っ越し先を決める
新しいお墓の場所を決定することは、特に重要な事柄です。自宅からの距離、公共交通機関の利便性、車でのアクセス、周辺の生活環境などを総合的に判断しましょう。
費用、管理体制、永代供養の有無、宗教・宗派の制約なども重要な検討事項です。永代供養墓、樹木葬、納骨堂など、近年はお墓の選択肢が多岐にわたります。ライフスタイルや家族構成、将来の展望に合わせて、最適な形式を選びましょう。
家族や親族とよく話し合い、皆が納得できる場所を選ぶことが、後のトラブルを避けるためにも大切です。資料請求や見学を重ね、納得のいくまで検討しましょう。
新しいお墓を選ぶ
引っ越し先の大まかな場所が決まったら、具体的な新しいお墓のタイプを選びます。一般的にイメージされる墓石を建てるのか、それとも集合墓や共同墓地のような形式を選ぶのか、あるいは近年増えている樹木葬や納骨堂、海洋散骨といった供養方法を検討するのか、慎重に判断しましょう。
予算はもちろんのこと、将来的にご自身やご家族がどのような形で供養を続けていきたいかを考慮に入れると安心です。お墓参りの頻度、お花や線香を供える習慣の有無、残された家族の負担軽減など、さまざまな側面から検討することが大切です。
必要な書類を準備して、行政手続きをする
お墓の引っ越しは、法律に基づいた行政手続きが不可欠です。下表のような必要な書類を漏れなく揃え、指定された役所に提出しなければなりません。
書類名 | 概要 | 取得先 |
受入証明書 | 新しいお墓の管理者から遺骨の受け入れを証明する書類 | 新しいお墓の管理者 |
埋葬証明書 | 現在のお墓に遺骨が埋葬されていることを証明する書類 | 現在のお墓の管理者 |
改葬許可申請書 | 遺骨の移転を許可してもらうための公的な申請書 | 現在のお墓がある市区町村役場 |
申請者の身分証明書 | 運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認のための書類 | 申請者自身で用意 |
申請者の印鑑 | 認印でも可能だがシャチハタは不可の場合あり | 申請者自身で用意 |
戸籍謄本 | 申請者と故人との関係性を証明するための書類 | 本籍地のある市区町村役場 |
遺骨の取り出し、法要を行う
改葬許可証が無事に発行されたら、いよいよ現在のお墓から遺骨を取り出す作業に入ります。単に遺骨を移動させるだけでなく、故人への敬意を表し、これまでのお墓に感謝する儀式として閉眼供養(へいげんくよう)または魂抜き(たましいぬき)と呼ばれる法要を行うのが一般的です。
この供養は、お墓に宿るとされる故人の魂を抜き、石をただの物質に戻すという意味合いがあります。僧侶を招いてお経を上げてもらい、丁寧に執り行いましょう。閉眼供養の後、石材店の専門家が墓石の一部を外し、慎重に遺骨を骨壺から取り出します。
お墓の解体を行う(墓じまい)
遺骨が無事に取り出された後は、残された古いお墓を解体し、更地に戻す「墓じまい」の作業を行います。これは、お墓があった場所を元の状態に戻すことを意味し、多くの場合、石材店に依頼して行われます。
墓石の撤去、基礎の解体、土の入れ替えなど、専門的な作業が含まれます。解体された墓石は、産業廃棄物として適切に処分されます。墓地の管理規約によっては、墓地を返還する際に原状回復の義務が課されている場合もあるので、事前に契約内容を確認しておくことが重要です。
墓じまいに関しては、次の記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。
引っ越し先のお墓に納骨する
すべての準備が整い、新しいお墓が完成したら、いよいよご遺骨を納める納骨(のうこつ)の儀式を行います。納骨では故人の魂を新しいお墓に迎え入れるという意味で、開眼供養(かいげんくよう)または魂入れ(たましいいれ)と呼ばれる法要を執り行うことが一般的です。
新しいお墓に僧侶を招き、お経を上げてもらい、故人の魂が安らかに新しい場所へ宿ることを願います。納骨が完了すれば、お墓の引っ越しに関する一連の流れはすべて完了となります。
ただし、外墓地から室内型の納骨堂に改葬する際は、遺骨を完全に乾かしてから納骨する工程があるため、一定程度の時間がかかります。
納骨については、次の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
お墓の引っ越しにかかる費用は?
お墓の引っ越しには、さまざまな費用が発生します。事前に内訳を把握し、準備を進めることがポイントです。
墓石の解体・撤去・運搬にかかる費用
現在のお墓を解体し、撤去する費用がかかります。これは、墓石の大きさや種類、作業の難易度によって変動します。また、遺骨を取り出した後の墓石の運搬費用も考慮する必要があります。
一般的に、1平方メートルあたり10万円から30万円程度が目安とされていますが、立地条件などによっても変わります。お墓の撤去については、次に記事も確認しましょう。
引っ越し先のお墓の購入にかかる費用
新しいお墓を購入する費用が最も大きな割合を占めるでしょう。一般墓石を建てる場合は、永代使用料、墓石本体価格、工事費用などがかかります。
永代供養墓や納骨堂、樹木葬など、選択する供養方法によって費用は大きく異なります。数万円から数百万円と幅広い選択肢があります。お墓の購入に関しては次の記事もあわせてご覧ください。
遺骨の取り出し、法要にかかる費用(お布施)
現在のお墓からの遺骨の取り出しに際して行う閉眼供養、そして新しいお墓への納骨時に行う開眼供養など、法要のお布施も考慮に入れる必要があります。
お布施の金額は寺院や地域によって異なりますが、一般的には数万円から10万円程度を目安とする場合が多いです。僧侶へのお車代や御膳料も別途必要になることがあります。
離檀料やお祝い金をいただいた際のお返しにかかる費用
現在お世話になっている寺院との関係を解消する際に、「離檀料」が必要となる場合があります。これは、これまで寺院が管理してきたお墓の管理に対する感謝の気持ちを表すものです。相場は数万円から20万円程度です。
法的な義務はありませんが、慣例として支払うケースが多いです。また、お墓の引っ越しにあたり、親族などからお祝い金をいただくこともあります。その場合は、内祝いとしてお返しを用意する必要があるでしょう。これらも費用の一部として計上しておくことが大切です。
先祖の墓を移動したい、お墓を引っ越す人が増えているのはなぜ?
近年、お墓の引っ越しを検討する方が増えています。その背景には、現代のライフスタイルや社会状況の変化が大きく関係しています。
お墓が遠方にあるため、管理が大変だから
核家族化や都市部への人口集中が進むにつれて、ご先祖様のお墓が遠方にあるというケースが増えています。年に数回のお墓参りでも、時間的・経済的な負担が大きくなることがあります。
高齢になると、遠距離の移動自体が困難になるため、身近な場所にお墓を移したいというニーズが高まっているのです。定期的にお墓を清掃し、管理することが難しいという現実的な問題が、引っ越しの大きな理由となっています。
お墓を維持するのが大変だから
お墓を維持するためには、年間管理費の支払いだけでなく、清掃や草むしりといった手間がかかります。また、墓石の修繕が必要になる場合もあります。これらの経済的・肉体的な負担が、お墓の維持を困難に感じさせる要因となっています。
なお、お墓の維持費については、次の記事でも解説しているので、確認してみましょう。
お墓を継ぐ人がいないから
少子高齢化の影響により、お墓を継ぐ人がいなくなるという問題が顕在化しています。お子様がいらっしゃらない方や、ご兄弟がいらっしゃらない方など、将来的に自分のお墓を誰が管理してくれるのか不安に感じる方が増えているのです。
ご先祖様のお墓が将来的に無縁墓になることを避けたいという思いが、お墓の引っ越しを検討する大きな動機となっています。
まとめ
お墓の引っ越しは、ご先祖様をより良い形で供養するための現代的な選択肢です。法的な手続きを踏む「改葬」であり、決して不幸を招くものではありません。大切なのは、お墓を適切に管理し、定期的に供養できる環境を整えることです。
関内陵苑では多様な供養の形を提供し、僧侶による手厚い法要も可能です。ご家族に寄り添ったサポートで、安心してお墓の引っ越しを検討できます。お墓のお引越しや供養を考えている場合は、ぜひご相談ください。